緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2015年

2015/09/07
緩和ケア便り 9月号

基本的人権としての「がんの心のケア」

精神神経科
藤澤 大介

国際サイコオンコロジー学会は、2014年にポルトガル・リスボンで行われた年次総会で、がんの心理社会的ケアを基本的人権として提唱する「リスボン宣言」を採択しました。

リスボン宣言は以下の7か条からなります(拙訳)。

国際サイコオンコロジー学会は、心理社会腫瘍学psycho-social oncologyに関わる組織の代表として、世界中で協力して、

1.心理社会的ケアと治療が基本的人権であるとの認識を高めるための方策を同定、開発、実践する。

2.がん患者・がんサバイバー・がん発症リスクのある人に対する適切な心理社会的ケアを確立する上で必要な法整備を行えるよう、政府や政策策定者と協働する。

3.感情、対人関係、家族、社会に及ぶがんの影響に対する効果的な治療として必要な、がんの心理社会的ケアへのアクセスと普及の向上を提唱する。これには、6番目のバイタルサインとしてのつらさのスクリーニング、必須向精神薬へのアクセスの向上、がん医療に携わる医療者のコミュニケーション・スキル・トレーニングの推進、などが含まれる。

4.がんの心理社会的ケアと精神腫瘍サービスの設立支援に必要な適切なリソースを提唱する。これには、がん治療施設におけるそのようなサービスや、がんの心理社会的ケアのトレーニングを受けている専門家に対する支援が含まれる。

5. 学術機関、教育病院、大学、ヘルスケア・システムが、心理社会ケア、資源、人材、設備、審査委員会、システムを創設したり維持したりするために必要な実践と改革を行うよう提唱する。

6.この「基本的人権としてのがんの心理社会的ケア」への意識付けを、他の国家的・国際的機関、連盟、関連団体に働き掛ける。

7.がんの心理社会的ケアは、各地域や各国における文化的・社会的・宗教的多様性に沿うように提供されなくてはならないという認識を推進する。

国際サイコオンコロジー学会は、この人権宣言を含む3つの基準−人権宣言、良質ながん医療におけるルーチンとしての心理社会的ケア、第6のバイタルサインとしてのつらさのスクリーニング−に署名を募集しています(www.ipos-society.org)。

私も賛同し、署名しました。そして、この人権宣言を胸に、より一層、臨床・教育・研究に取り組みたいと思います。

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