緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2013年

2013/02/8
緩和ケアチーム便り

辻 哲也
腫瘍センターリハビリテーション部門

日中の日差しの暖かさに、少しずつ春を感じるようになりました。昨年8月に「3号館南棟」がオープンしてから、早いもので、もう半年が過ぎようとしています。4階の腫瘍センターでは、緩和ケア外来、腫瘍センター外来、口腔ケア外来とともに、(おそらく)我が国で初めて、がんリハビリテーション外来が始まりました。

いままで、がんリハビリは、主に入院中のがん患者さんを対象に、治療による合併症や後遺症の予防や軽減を目的に行われてきましたが、がんリハビリ外来では、次のような障害をもたれた自宅療養中の患者さんを対象にしています。

1.食道癌の治療後の嚥下障害・発声障害・体力低下
2.頭頸部癌(舌癌・咽頭癌・喉頭癌)治療後の嚥下障害・発声障害、肩の運動障害・痛み
3.乳癌術後の肩の運動障害・痛み、腕のむくみ
4.脳腫瘍・脊髄腫瘍による手足の麻痺・認知面の障害
5.放射線・化学療法中・後・造血幹細胞移植後の体力低下・倦怠感・手足のしびれやむくみ
6.骨・軟部腫瘍術後の切断 (義手・義足)
7.積極的な治療が受けられなくなった時期の自宅での療養生活サポート
8.原発性リンパ浮腫、乳癌・婦人科がん術後の上肢・下肢のリンパ浮腫

腫瘍センターには外来化学療法のためのベッド60床がありますが、抗がん剤(化学療法)や放射線な治療中もしくは治療後の患者さんにとってもリハビリはとても大切です。それらの治療中は、副作用で、全身の倦怠感やしびれ・痛みが生じたり、口内炎や吐き気、下痢などが生じて食欲が低下したり、眠れなくなったりすることもあります。さらに、精神的なストレスを感じたり、意欲が低下したり、気持ちが塞ぎこんだりして、昼間もベッドで伏せりがちです。こうして動かなくなると、筋力はたちまち落ちて体力も低下し、少し動いただけでエネルギーをたくさん消費するため、一層疲れやすくなります。そして、疲れるから動かない、動かないから体力が低下する悪循環に陥ってしまいます。

このような状態は「がん関連倦怠感」と呼ばれ、この時期に行うリハビリとして「運動療法」が最も重要であることがわかってきました。運動を行うことで身体機能が高まるため、動いてもエネルギーをそれほど消費しなくなり、疲れなくなるのです。また、すっきりした気分になり、精神的苦痛も軽減されてQOL(生きることの質)が向上します。運動療法は、抗がん剤や放射線の治療中に開始すると、より効果が高いといわれています。おすすめの運動はウォーキングや自転車エルゴメーターといった有酸素運動と軽い筋トレです。

腫瘍センターがんリハビリ外来では、自宅療養中のがん患者さんの療養生活の質の向上を目指して先駆的な取り組みを進めています。がんの治療中から必要なリハビリを受けるために、担当医をはじめとする医療スタッフにご相談ください。

<<前号へ 次号へ>>

ページの先頭へ