緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2010年

2011/01/01
緩和ケアチーム便り
「ウサギ、ウサギ 何見て跳ねる‥」

橋口 さおり

早いもので、緩和ケアチームの本格的な稼動から3年がたとうとしています。
人手は最小限、でも、やりたいことだけは両手いっぱいにかかえたメンバーとともに歩んでまいりました。

マスコミなどで緩和ケアがとりあげられる機会が多くなったこともあるのか、少しずつ‘緩和ケア’という言葉が広まってきている手ごたえはあります。
一方で、やはり、緩和ケア=終末期という印象をもっている方も多く、緩和ケア=棺桶屋と間違えられてしまった、というあまり有難くない笑い話があったりします。

では、‘緩和ケア’とは何か。

人類は、病や苦痛から一人でも多くの人が開放されることを願って、医療を発展させてきました。
病気以前に‘人’に目を向けてきた技術であったはずです。
ただ、近代になって、科学技術としての医療を優先するあまり、少々‘人’が見えなくなってしまっているのではないでしょうか。

緩和ケアは、「それぞれの方がかかえる様々な苦痛に目を向け、その苦痛を予防し、軽減するための積極的なアプローチ」であるといっています。
つまり、もう一度、‘人’を見よう、といっているのです。
ですから、緩和ケアは何も特別なことではなく、「医療として当たり前のことである、苦痛への対応を、当たり前にやっていきましょう。でもそこにはやはり技術は必要ですよ」ということなのです。

私は、医学生が医学を学ぼうとするときに、内科学や外科学を学ぶのと同じレベルで、緩和ケアについても学ぶべきだと考えています。
だって、‘人をみる’医療では、基本中の基本であり、当たり前のことですから。
教育のことも含めると、これからやらなければならないことは山積しています。

なんだか大きな話になってしまいました。
もしかしたら、地上のウサギが十五夜お月さんを見て跳ねるのと同じようなものかもしれません。
でも、やっぱり緩和ケアとはそういうものだ、と信じていますので、一所懸命に跳ねてみてやろう、と思う今日この頃です。

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