- 2010/11/01
- 緩和ケアチーム便り
宮島 加耶
厳しい暑さが和らいだのもつかの間、風を冷たく感じる日が多くなってきました。柿の実が色づき、どんぐりが落ちているのもちらほら見かけます。もう少しすると、慶應病院近くの銀杏の並木道も黄色に染まるでしょうか。
緩和ケアチームでは、さまざまな職種のメンバーが集まり、がん患者さんの体のつらさ、気持ちのつらさ、ご家族の気持ちのつらさ、患者さんとご家族の希望する療養の支援を行っています。私は、今年の4月より、チームのメンバーになりました。精神科医にできることはなにか。それは、特別な新しい解決法を伝えることではなく、がんという圧倒的な出来事とその過程で立ち止まってしまった患者さんとそのご家族が、もともともっていらっしゃる力とバランス、その人らしさ、そのご家族らしさを取り戻し、歩んで行かれるのを、支えることなのだろうと思います。
この間、哲学者 池田晶子の『魂とは何か』という本を読みました。「医者と患者との間に、いま欠けていて、そして絶対に必要なもの、それは『対話』である。医者も、患者も、語らなすぎる」。著者の意図をこえて自分なりに読みかえている部分もあるかもしれませんが、すっと入ってくる言葉でした。患者さんは、先生にこんなことを言っていいのだろうかとためらう、医療者側も、こんなことを聞いていいのだろうかと遠慮する、そうして、お互いになかなか思っていることを伝えられず、行き詰ってしまう。そういうことは、病気の診断、治療のいろいろな重要な場面で起きうると思います。そのようなときにも、緩和ケアチームでお手伝いできることがあるかもしれません。
これからも、みなさまの困っていることを相談していただく存在として、活動を続けていきたいと思います。