緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2010年

2010/04/01
緩和ケアチーム便り

辻 哲也

これまでがんは治療ばかりが重視され、脳卒中や骨折などのようにリハビリに明確な診療報酬がついていませんでした。今回、平成22年度の診療報酬改定で、専門の医師、スタッフのもとでがんのリハビリをすると20分2千円が支払われることになりました。

医療の進歩により、がんになっても早期発見によって完治することが多くなり、また、完治しなくても、がんと共存しながら長い期間生きていけることも増えてきています。

がんのリハビリは、がん治療開始後に合併症が出てから始めるのではなく、治療開始前から「予防的リハビリ」を開始します。治療が始まったら引き続き、「回復的リハビリ」を行い、後遺症を最小限にして、スムーズに治療前の生活に戻れるようにします。

がんが進行していたり、再発して骨に転移したりした場合は、がんの治療とともに生活の質を落とさないようにする「維持的・緩和的リハビリ」を行ってきます。最近は、外来で治療を受けることも増えてきていますが、通院で疲労することも多く、それを克服するためにも体操や散歩を行うなどして、なるべく体を動かして体力をつけ、元気に過ごせる時間を延ばすようにします。また、骨への転移により骨折してしまうと生活に支障が出るので、骨折の危険性を認識してもらい、転移のある部位に衝撃やひねりなどの力が加わらないように指導します。

がんの再発後にがんと共存する時期が長い年月続くこともあります。その場合には患者さんの希望を大切にします。例えば、麻痺があっても「歩きたい、トイレに自分で行きたい」という場合には、杖や歩行器などの補助具を利用したり、起き上がり方や車椅子へ乗り移り方など、動作のコツを介護される方と一緒に学んだりします。

「がん患者さんにリハビリが必要である」ということは、これまであまり知られていませんでした。今回の診療報酬改定は、がんのリハビリが普及していく上で大きな意義があると思います。しかし、日本では、がんのリハビリ専門の医師やスタッフの数も十分ではなく、今後は人材育成も課題です。

当院では、がん患者さんへの積極的なリハビリの導入とともに、がんのリハビリの専門スタッフの育成や研究を推進し、がん患者さんの療養生活の質の向上を目指して先駆的な取り組みを進めています。がんと診断された直後から必要なリハビリを受けるために、担当医をはじめとする医療スタッフにぜひ相談されてください。

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