- 2009/09/01
- 緩和ケアチーム便り
白波瀬丈一郎
今回は、『顔の見える緩和ケア』について話したいと思います。
慶應病院には緩和ケアチームができる前からいろいろな自主的な活動があったことは、すでに橋口先生が触れたとおりです。その一つとして、私は10年ほど前から血液内科の骨髄移植(BMT)チームに参加しています。そこで目指したのが『顔の見える、精神科コンサルテーション』でした。
その取り組みの一つは、BMTを受ける患者さんとの顔合わせです。私は BMT目的で入院してこられた患者さんには、メンタル不調の有無にかかわらず、全員お会いします。がんになったということも、移植をはじめとする治療も、そして一定期間無菌室という閉鎖空間で生活することもいずれも精神的ストレスとなる可能性があります。確かに、精神科医本来の仕事は、精神的ストレスによって患者さんに何らかのメンタル不調が生じたときから始まります。それでも、患者さんにしてみれば、精神的に困ったときに、専門家とはいえ見知らぬ精神科医が来るよりも少しでも顔見知りが来たほうが相談しやすいのではないでしょうか。ですから、最初にお会いして以後お会いすることのない患者さんもたくさんおいでになりますが、私はBMT目的の患者さんと全員お会いして顔合わせすることを続けています。
もう一つの取り組みは、病棟に顔を出すことです。BMTチームでは週に1回メンタル関連のカンファレンスを開いていますが、それ以外の時にもできるだけ病棟に顔を出すことを心がけました(最近は、あまり実行できていませんが)。それは、チームのメンバーが気軽に声をかけられるような関係作りを目指して行ったことでしたが、加えて精神科医が病棟にいるのは何か特別なことではなく日常的で当たり前なことという雰囲気を作ることができたらとてもいいなとも思っていました。BMTチームの協力のおかげで、精神科医が病棟にいるのが普通という文化が随分できてきたように思いますし、それに伴ってメンタルに関する事柄を気軽に話し合えるようになったと思います。
緩和ケアチームについても、緩和ケアスタッフが病棟にいるのが当たり前という文化を作り、『顔の見える緩和ケア』を実践できるようにしていきたいと考えています。人手のこともあり、すぐに病院全体で実践することは困難ですが、少しずつ頑張っていきたいと思っています。