緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2009年

2009/08/01
緩和ケアチーム便り

福田桂太郎

7月1日より、木々に囲まれた三島の静岡がんセンターから、建物に囲まれた慶應義塾大学病院へ戻ってきました。

私は、皮膚科の大学院生です。医学部の大学院生というと、研究室で実験を行うことが多いのですが、私は昨年、新設された「がん専門医養成コース」という、臨床系の大学院に入学し、がん診療の研修を行いながら、がん専門医を目指すことにしました。

今日のがん診療では、化学療法・放射線治療・緩和医療も重要な位置を占めます。今までは、各専門家に一任することが多かったのですが、患者さんに適した治療をより迅速に行うには、専門でなくても、これらの知識・経験が必要になってきました。そこで、このコースでは、緩和ケア、放射線治療などを専門の科で診療研修する機会が与えられており、この7月より2ヶ月間、私は緩和ケアチームの一員として、行動させて頂いています。

昨年は、静岡がんセンターで皮膚がんの診療に当たりました。患者さんの生活の質を可能な限り維持できるよう、患者さん、家族、主治医の組み合わせだけでなく、放射線科や精神科医などの先生、看護士、ソーシャルワーカーといった他職種と密に連携しながら医療を行う「チーム医療」を積極的に行いました。慶應の緩和ケアチームもチーム医療を行っていますが、主治医の側から関わるのと、緩和ケアを行う側から参加するのでは、患者さんに対しての感じ方、考え方が変わるものですね。

緩和ケアチームに参加して、特に強く感じるのは、患者さんの抱えている痛み、不安、知りたいことなどは、患者さん、そしてその家族ごとに全然違うということです。個別に対応して行く緩和ケアは、主治医が提供する治療法の数よりはるかに膨大で、様々なバリエーションが必要とされ、大変難しいと思いました。実際日本でも、この違いを意識し、多くの違いの中から、自分と似ている方の体験を聞くことで、患者さんの不安の解決の一助になればと、患者さんのためのデータベース作りも行われるようになってきています。緩和チームでの研修の期間は短いですが、この経験を活かして、今後も患者さんが抱える現在・将来の不安や痛みに対して、患者さん毎に応じたケア・方策を提供しつつ、改善して行きたいと思います。

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