- 2024/8/22
- 緩和ケア便り 8月号
慶應義塾大学病院 緩和ケアセンター
福田 陽子
4月1日より慶應義塾大学病院緩和ケアセンターに着任いたしました福田陽子と申します。10年ほどの緩和ケア病棟勤務を経て古巣である当院緩和ケアチームで再び働かせていただくことになりました。
緩和ケアは “がんと診断された時から” 患者さんや患者さんご家族の様々な困りごとに対応していくケアの総称です。誤解されやすいのですが、決して終末期ケアだけを指すものではありません。特に当院のような治療病院では、患者さんがより抗がん治療を受けやすいように、緩和ケアチームが多く関わらせていただいています。
一方、前職で私が関わっていた緩和ケアはその中でも治療を終えられた時期の緩和ケアでした。ご自宅などで過ごすことが難しくなり、苦痛緩和のために入院される方々のケアにあたってきましたが、その中で学ばせていただき大切に思っていることは、患者さんは “病気の人”ではない ということです。 お一人お一人にこれまでの人生の軌跡や、ご家族、ご友人との関わり、絆、願い、祈りがあり、お一人お一人の人生は彩りにあふれています。ただ、どうしても苦痛が多い場面においては、周囲でサポートする医療スタッフやご家族は心配がつのりますから、病気に集中し、気づけばその方を “病気の人” として見てしまいがちです。
“病気は不幸な出来事かもしれないけれど、 決してその方自身が不幸な人という訳ではない”
前職場で一緒に働かせていただいた病院チャプレンのおっしゃっていた言葉が私の心の礎となっています。患者さんと接する時、その方の苦痛に寄り添うことはもちろんですが、その方の力の源となりうるものや、その方を包み支えるものにも心を寄せながら、大切にサポートさせていただきたいと思います。