- 2022/07/13
- 緩和ケア便り 7月号
慶應義塾大学医学部医学研究科 博士課程
がんプロフェッショナルコース2年生
慶應義塾大学医学部 外科学教室(一般・消化器)
辻 貴之
慶應義塾大学医学部一般・消化器外科の辻貴之です。がんプロフェッショナル養成コースの一環で、2か月間緩和ケアチームで研修させて頂きました。
私が緩和ケアという言葉に初めて触れたのは中学生の時。闘病中の祖母のお見舞いで母に連れられて訪れたのが“緩和ケア病棟”でした。当時祖母の病状を知らなかった自分にとって、その言葉を見たときの重苦しい感情は今でも忘れられません。祖母の死期は近いのか。子供ながらにそう感じたことを覚えています。
この2か月間で診療にあたった患者さんの中にも、当時の私と同じような感情を抱いていた方も多くいらっしゃいました。痛みに対して使用する“医療用麻薬”という言葉に動揺を示す方も多くいらっしゃったことも印象的でした。
実際の緩和ケアは、がんの診断がついた段階においても、つらい症状があれば適応となります。医療用麻薬も、適切に使用すれば、症状を緩和し、QOLの向上に大きく寄与します。
様々な症状に対応する必要がある緩和ケア領域では、幅広い知識が必要とされます。病気やその治療への理解、痛みや不眠などの多彩な症状への対応方法など、医療者としての総合力が問われる領域と考えます。そして何より、患者さんとその家族への関わり方は、相手が難しい状況に置かれているが故に、繊細な感覚が必要とされます。
慶應病院の緩和ケアチームは、文字通り「チーム」です。様々なバックグラウンド、専門領域を持つ先生や看護師、薬剤師など、多くのスタッフが一人一人の患者さんの問題に向けて取り組んでいます。多様性があるからこそ、緩和ケアという難しい領域に適切に対応することが可能であり、また私自身も、様々な視点で学ぶことができました。なによりも、多くの目があるからこそ気づくことのできる、細かい配慮は、チーム医療の大切さを改めて感じさせられました。
自分や自分の家族も診てもらいたい、心からそう感じることのできた素晴らしいチームの下で過ごした2か月間の経験を、今後の自らの診療に生かしていきたいと思います。
最後に、日々お忙しい診療の中、丁寧にご指導して下さいました緩和ケアセンターの皆様に心より御礼申し上げます。