緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2021年

2021/1/26
緩和ケア便り 1月号

がんプロフェッショナル養成コース
慶應義塾大学医学部 外科学(一般・消化器外科)
嶋根 学

私は一般・消化器外科に所属する嶋根学と申します。2020年10月の1ヶ月間、がんプロフェッショナル養成コースの一環として緩和ケアチームで研修させて頂きました。私自身は医師3年目、4年目時に関連施設へ出向した際には主治医として緩和ケアに関わる機会がございましたが、この度は重点的に専門家の下で緩和ケア医療につき学習することが出来た貴重な経験でありました。

緩和ケアチームでの研修では、オピオイドや鎮痛補助薬など薬剤の具体的な使用方法を学ばせて頂きましたが、最も感銘を受けたのは「聴く」ことの重要性でした。緩和ケアは苦痛をとる医療であり、苦痛には身体的、社会的、精神的、スピリチュアルな苦痛があります。我々は苦痛の種類、期間、タイミング、増悪因子、程度あるいは日常生活へ及ぼす影響について詳細に認識することで、必要なケア提案やその効果判定が可能になります。

しかしながら患者さんには自発的にお話になられる方、一方であまり感情の表出のない方など千差万別でこれらを詳細に把握するのは容易ではなく、聴くことの困難さも痛感しました。緩和ケアセンターの先生は、適切な距離感でコニュニケーションを取ることに非常に長けていると感じ、診察時の会話やムードなどは非常に参考になりました。

苦痛に対して多面的にアセスメントすることは治療方針を決定する上で非常に重要であります。当院の緩和ケアセンターでは、医師、看護師をはじめ、薬剤師や管理栄養士が一同に介し多職種でミーティングを行い、各専門領域より評価を行うことで、主科のみでは想定し得なかった問題点や治療方針を提起できると思いました。

がん対策推進基本計画では、がんと診断された時からの緩和ケア介入が推進されており、その認知度も向上してきています。我々外科医は術前(いわゆる早期)から最期まで関わることのできる診療科であり、あらゆるタイミングで患者さんのニーズに添い緩和ケアを提案する責務を担っております。主治医は緩和ケアと患者さんを円滑に繋ぐいわばハブとして機能することも重要であると感じました。

今後私は消化器外科医師としての研鑚を積んで行くことになりますが、この1ヶ月間で学んだ患者さんとの距離感、聴く姿勢を大事にして参りたいと思います。また緩和ケア依頼をする側から受ける側を経験したことで、より適切なコンサルテーションが行えるようになったのではないかと考えています。

最後に、お忙しい業務の中丁寧にご指導くださった緩和ケアチームの皆様に厚く御礼申し上げます。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

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