緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2017年

2017/04/19
緩和ケア便り 4月号

精神・神経科 山本林子

2017年1月から3か月間、緩和ケアチームで研修をさせていただました。

これまで精神科医師としてがん患者さんに関わらせていただく機会は、患者さんに“せん妄”とよばれる現象(軽度意識障害を背景として混乱等が生じること)が生じた場面が主でありました。主治医の先生と連携し、身体状況や精神的な要因を考慮しながら症状改善を目指しておりましたが、緩和ケアチーム研修を経験するなかで、多くの専門家の力を借りることの重要性を一層強く認識いたしました。緩和ケアチームでは、麻酔科医、外科医、精神科医、看護師、薬剤師、臨床心理士といった多職種からなるチームが、一人の患者さんに対して、それぞれの専門の視点から時間をかけてアセスメントを行い、最良のサポートについて話し合います。そこでは異なる分野を専門とするスタッフの指摘に、はっとさせられることも多く、また、精神科医師としての意見を求められる場面では、正確な情報をわかりやすく伝えなければという責任を感じながら議論に参加させて頂くことができました。精神科医の役割をあらためて考え直す貴重な機会をいただいたと感謝しております。

また、多くの患者さんのもとへ足を運ばせていただく中で印象に残ったことがあります。「薬は我慢した方がいいんでしょう?」と痛みを我慢されている方や「家族には心配をかけたくないから、つらいとか苦しいと言えないのです」と、お気持ちを一人で抱えていらっしゃる方が少なくなかったことです。緩和ケアチームでは、痛みの原因を細かく評価し、痛みの少ない体の動かし方や、必要に応じた量と種類の薬剤を提案させていただいております。精神的なつらさに対しては、お話をうかがわせていただきながら少しでもお力になることを目指しております。痛みも、こころのつらさも、病気に向き合う考え方も人それぞれですが、緩和ケアチームでは標準的な方法を押し付けるのではなく、患者さんにとっての最良の方法を患者さんと一緒に見つけていくことを目指しております。苦痛を減らし、ご自身らしく過ごせる時間を増やすために、ぜひご遠慮なくご相談をいただければと思っております。

緩和ケアチームの中で研修させて頂き、患者さんをみるとはどのようなことか、チーム医療とはどのようなものか、精神科医の役割とは何か、といった医師としての基本的かつ重要なことをあらためて学ばせて頂きました。今後、精神科医として働かせて頂く上で大変貴重な経験をさせて頂きました。この場をお借りして御礼申し上げます。

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