- 2024/2/7
- 緩和ケア便り 2月号
慶應義塾大学医学部 内科学(血液) 藤井 高幸
私はがんプロフェッショナル養成コースの一貫として、約2か月間緩和ケアセンターを研修させて頂きました。普段は血液内科医として、緩和医療の実践にも関わっていますが、より専門的な知識と技術を深めたいと考えていました。
研修期間中、慢性閉塞性肺疾患や心不全などの非悪性疾患をもつ患者さんの診療にもあたりましたが、主には消化器がんや婦人科がん、肺がんなど悪性疾患をもつ患者さんを多く診療しました。疼痛や呼吸困難などの身体的症状だけでなく、不安や抑うつといった精神的な問題、生きる意味や死への恐怖に関するスピリチュアルな苦痛、仕事や家族の問題といった社会的な課題にも対応しました。
緩和ケアセンターの皆様と共に患者さんの診療にあたり、丁寧な指導のもと多くのことを学ぶことができました。特に、がん性疼痛への医療用麻薬の実践的な使用方法について深い知見を得ることができました。痛みの原因を分析し、医療用麻薬の作用機序から副作用、投与経路に至るまで、患者さん一人一人にあった適切な治療ができるよう努めました。また、緩和ケアセンターの皆様は患者さんとのコミュニケーションにおいて卓越した技術を持っており患者さんからの信頼が厚かったです。医師や看護師、薬剤師、その他のスタッフから成る多職種チームとして機能することで、自分一人では気づかない改善点を見出したり、見落としを予防するなど、幅広い視点からのアプローチが可能でした。
以前は、病気の治療に重点を置いて診療をしていたことを痛感させられましたが、緩和ケアセンターでの研修を通じて、同じ病気でも患者さんの数だけ異なる治療があることや、「患者さんを診る」ことの重要性を再認識しました。緩和ケアチームの献身的な姿勢に触発され、私自身も診療の質が向上したと感じています。
この貴重な経験を今後の医療に生かし、一層の精進をしていきたいと思います。
今回の研修でご指導いただいた医師、看護師、薬剤師の皆様、そしてスタッフの方々に、心から感謝申し上げます。