緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2023年

2023/3/28
緩和ケア便り 3月号

慶應義塾大学病院 薬剤部
嶋 亮太

第7回Supportive Care Conference(SCC)が2023年3月1日(水)19時よりオンライン開催されました。

まず、一般演題として当院薬剤師の滝澤詠美子先生より「オピオイド鎮痛薬の適正使用を推進する〜がん患者さんの伴走者として〜」という表題で発表いただきました。

がんサバイバーの抱える様々な痛みは、がんの進展や浸潤などによる痛みだけではなく、がんの治療による痛みや、がん治療と直接関係のない痛みも含むため、原因も踏まえて疼痛アセスメントを行い、オピオイド鎮痛薬を使い分ける必要があるということ教えていただきました。そして、オピオイド誘発性便秘症は患者さんのQOLを下げるだけでなく疼痛治療にまで影響をするということを、文献の紹介を交えながら解説頂きました。滝澤先生のお話は、病棟薬剤師としてがん患者さんのために何が出来るのかを、実症例を提示しながら提案に至ったエビデンスも紹介していただき、薬剤師である私にとっても実践に生かせる内容でした。後輩として誇らしく、また自分自身への叱咤激励となりました。

続いて特別講演として、東京大学医学部附属病院 麻酔科・痛みセンター准教授の住谷昌彦先生より「がん患者の痛みが改めて『がん性疼痛(cancer-related pain)』と定義された意義を考える」の演題でご講演いただきました。

はじめに、「がん性疼痛」について定義(がん性疼痛とは「がん自体による痛み」と「がん治療による痛み」の総称)から分かりやすく解説していただきました。そして、化学療法誘発性末梢神経障害への対策はがん患者さんにとって最適な治療を継続する上で極めて重要であり、患者さんのQOL維持向上や生命予後延長への寄与が期待できるということを、あらためて学ばせていただきました。

次に、2018年に改訂されたWHOがん性疼痛に関するガイドラインの変更点について分かりやすく解説いただきました。また、日本ではがん性疼痛に対する医療用麻薬の使用量が先進国の中でも少ないというデータを示していただきました。がん関連神経障害性疼痛の薬物療法でもオピオイド鎮痛薬の使用が考慮される場合もあるということで、あらためて医療用麻薬の適切な使用の重要性を再認識しました。未だに「麻薬=依存・死期が近い」など怖いイメージを持たれる患者さんや医療者がおり、私自身にも患者さんから医療用麻薬の開始を誤解に基づいて拒否されてしまうという経験があります。医療用麻薬について分かりやすくご説明し患者さんが納得・安心して利用できるよう、ガイドラインや文献から最新の知識を習得すると共に患者さんの気持ちに寄り添って対応することが必要だと実感しました。

今回のお二方のご講演は臨床現場ですぐに役立つ情報ばかりであり、がん治療に携わるすべての医療従事者にとって勉強となる内容だったのではないでしょうか。今から第8回のSCCも楽しみにしていますし、自分自身もSCCに積極的に参加し発表や討論が出来るよう精進して参りたいと思います。

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