緩和ケアチーム便り

緩和ケアチーム便り

2023年

2023/1/16
緩和ケア便り 1月号

慶應義塾大学医学部一般・消化器外科
がんプロフェッショナル養成コース
小林亮太

自分が医師を志したきっかけのひとつに、家族の闘病があります。当時大切な家族が病と闘う中で、家族全員が同じように痛みを感じておりました。あの時の経験から、大切な人を病から守る力を身につけようと心に決め、医師をこころざし、本日まで研鑽を積んできました。一般・消化器外科の道に進んだのは、自分自身の手で命を救うことができる診療科だからです。集学的治療の進歩により、手術で救うことのできる患者さんも日々増えてきて、非常にやりがいを感じています。しかしその一方で、いくら医学が進歩しても救うことのできない癌患者さんがいるという事実を日々突きつけられてきました。その中で、命を救うことのみではなく、その人らしい時間を過ごせるようなケアを提供することこそが、医師の責務なのだと学んできました。緩和ケアは患者さんの人生に大きく関わる、医学において一番重要な領域の一つであると考えており、今回の研修は大学院のプログラムの中でも一番心待ちにしていたものの1つでした。

緩和ケア領域では、疾患やその治療を理解するだけでなく、痛み、悪心、不眠、便秘から始まり様々な症状に対応する必要があるため、幅広い知識が必要とされます。複数の専門領域にまたがるプロブレムをアセスメントする必要があり、医療者としての総合力が必要とされる領域です。当院の緩和ケアチームでは、複数の専門領域の医師や看護師、薬剤師、栄養士など多職種のメンバーが一丸となり、患者さん一人ひとりのことを非常に丁寧に、かつ非常に深く検討されていました。具体的には、患者さんの経過を詳細に把握するだけでなく、日々使用している薬剤の種類・回数・使用時間・使用状況とその変化、メディカルスタッフに語りかけた内容、診察時の姿勢・仕草・身の回りの物の様子、家族構成や家族との関係性、家族の闘病歴やそれに対する思いなど(ここに記載したのはほんのごく一部です)を把握した上で、患者さんのプロブレムを把握し、アセスメントを行っています。自分が想像すらしていなかった部分が症状や治療に影響していることもあり、チーム医療の素晴らしさや大切さと、数々の大事な視点を学ばせていただきました。また、当院の緩和ケアのスタッフは、主治医と同様に患者さんのことを理解し寄り添うという気概を持って診療にあたられていて、その非常に高いプロ意識に尊敬の念を抱くと同時に、身の引き締まる思いでした。

素晴らしいチームのもとで数々の知識や視点を学ばせていただいた1ヶ月間の研修を活かし、これからも医療者として日々研鑽を積んでいきたいと思います。

最後に、忙しい診療の中でご指導くださいました緩和ケアチームの先生方、スタッフの方々には心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

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