- 2020/1/7
- 緩和ケア便り 1月号
慶應義塾大学医学部 漢方医学センター
濱口卓也
2019年9月から12月までの約4ヶ月間、高齢がん患者に対する緩和医療実践コース【アドバンスコース】を受講し、慶應緩和ケアセンターでお世話になりました。私は2020年1月より他の大学病院で緩和ケアセンターに勤務することになりました。患者さんとの接し方や各科主治医の先生とのコミュニケーションの取り方、チームとしての動き方などについて幅広く学ばせていただくために参加しました。
緩和ケアのイメージは近年大きく変わってきました。1990年代はがん患者さんの終末期に適応されるケアと考えられてきましたが、2002年にWHOが緩和ケアの定義を修正して以降、「がん患者さんの終末期に限らず、より早期より疼痛に介入する」ケアに変わってきています。適切な緩和ケアをそれぞれの患者さんに行うために、緩和ケア医の重要性は高まってきています。
この研修では緩和ケアチームの病棟回診に同行し、がん患者さんの疼痛の評価や薬剤調整、副作用の評価まで、現場で丁寧に教えていただきました。慶應緩和ケアチームは緩和ケア医、看護師、薬剤師、管理栄養士と多職種から構成されています。それぞれの視点から患者さんの評価を行うことで角度を変えた見方ができ、問題点を把握しやすく、的確な対応に繋がっていると思われました。
緩和ケアチームではがんに伴う痛みを評価し、適切な段階の鎮痛薬や鎮痛補助薬、オピオイドの使用を主治医に提案しています。これらの薬剤は患者さんの状態に応じて使い分ける必要があり、また副作用にも配慮が必要で、より専門的な知識が要求されます。知識を深め、安全で適切な疼痛管理を患者さんに還元できるよう努力して参ります。
また、がん患者さんにみられる不安や落胆、孤立感など精神的な辛さに対しても、ケアを行っています。患者さんの気持ちに焦点を当てることで共感的で思いやりのあるコミュニケーションが可能となります。私自身はがんの経験はなく、「どのようにがん患者さんに寄り添っていくのか」は今後も考えていくべき課題であると思います。患者さんの辛さに想像を働かせ、理解し、少しでもお力になれるよう努力して参ります。
最後になりましたが、ご指導いただきました緩和ケアセンターの皆様に感謝申し上げます。