- 2017/09/15
- 緩和ケア便り 9月号
翻訳書のご紹介です。
「ミーニング・センタード・サイコセラピー:がん患者のための個人/集団精神療法:人生の意味に焦点をあてた精神療法」(河出書房新社)
藤澤大介(精神・神経科)
自分の存在を意識し、生に意味を求めることは人間固有の特徴です。人生の意味の感覚の喪失(生きていることに意味を感じられないこと)は、スピリチュアル・ペインの重要な一要因で、緩和ケアにおいて最も頻度の高い問題の一つであり、日・米の緩和ケア患者さんの約40%にその問題が認められたと報告されています。
生きる意味の喪失感は、うつや不安、“死を早く迎えたい”という気持ち(安楽死希望など)と関連しており、逆に、生に意味を見出せていると、身体症状のつらさ、抑うつ、希死念慮、絶望感が緩和され、QOLや人生の満足度が高まることがわかっています。
生きる意味にフォーカスをおいた心理支援にはいくつかありますが、中でも、米国スローン・ケタリングがんセンターで開発されたmeaning-centered psychotherapy(人生の意味に焦点をあてた精神療法)は、進行がん患者さんの生きる意味の喪失感や心理的苦痛に対して有効性が実証された精神療法です(河出書房新社)。体験、態度、創造、歴史という4つの源泉に生きる意味を見出し、それを再発見、再構築します。
・体験:愛、自然、芸術などの様々な体験や感動
・態度:苦しみ、限界などに対する態度を選ぶこと
・創造:何かを生み出すこと(例:仕事、子育て、責任、創作)
・歴史:前世代から受継ぎ、自分の人生で作り、遺していくもの